子供の学力は遺伝ではなく、家庭の環境や所得が大きく関係している!
『勉強 遺伝』というキーワードで検索すると何故か『母親』という語句が関連ワードに上がって来ます。父親の遺伝は関係ないの?
そもそも本当に勉強と遺伝は関係があるのでしょうか?
“勉強出来る”は遺伝で決まる?!
2015年にイギリスの大学教授が専門誌に寄せた研究報告では、「遺伝子が勉強に影響を及ぼしている。」と結論付けています。
ただし、この調査は双子に焦点を当てたものであり、他の研究者からも「まだ仮定の段階だ。」として否定的な意見も出されています。
2017年には国際研究チームが発表した人の知能に関する研究報告でもIQへの遺伝的影響について言及されていますが、遺伝子でIQを説明出来るのはせいぜい5割程度で、頭の良し悪しを遺伝で全て語れるわけではないと専門家は言います。
遺伝ではなく“母親の影響”
何故『母親からの遺伝』と考えられているのかといえば、幼少期の子供と母親が接する時間が長いことが要因のようです。
脳の発達が最も活発な1~2歳の時期を長く一緒に過ごすことによって、子供の知能にも母親の影響が色濃く現れます。
このために、勉強の能力が母親から遺伝しているかのように受け取られるようです。
では、遺伝が関係ないとすれば、子供の勉強能力は一体何で左右されるのでしょうか?
環境で決まる!子供の学力への影響
国の委託を受け実施された研究調査では、家庭での社会的経済背景(SES)が子供の学力に関与していると報告されています。
この社会的経済背景(SES)とは、世帯所得、父親の学歴、母親の学歴の3つの要素を組み合わせ数値化させた指標です。
このSESが子供の学力と密接に係わっているというのです。
小学校・中学校どちらにおいても「SESが高い保護者の子供ほど学力テストの正答率が高い傾向が認められた。」という結果が出ています。
ざっくり言ってしまえば「世帯の所得や親の学歴で子供の学力が左右される。」という話です。
収入が低いと子供の学力も低くなる?
これまで子供の貧困は学力格差に繋がっているとして、深刻な社会問題であると認識されて来ました。
確かに家庭の豊かさと学力の関係はある程度比例しています。
しかし、『低所得世帯=学力が低い』とは言い切れない調査結果が平成29年度の全国学力・学習状況調査によって明らかになりました。
規則的な生活習慣を身につけ、小さな頃から本や新聞などの活字文化に親しむ生活をしている子供は、保護者が低学歴・低所得であっても学力が高い傾向にあるという調査結果があります。
特に注目すべきは「家庭における読書活動が子供の学力に最も強い影響力を及ぼす。」という点。
読書によって知的好奇心が高まり、学ぶ意欲が身につくのです。
裕福な世帯は子供の教育に熱心で、積極的に教育に取り組む姿勢がある一方、いわゆる貧困家庭は教育に対する関心が薄い傾向にあります。
結果として貧困家庭では子供の学力が低くなってしまうようですが、家庭内での働きかけ次第で高い学力が身につく事が今回の調査分析で証明されました。
この習慣で勉強が出来る子に?!
SESの高低(所得や学歴の格差)を差し引いても子供の学力が高い家庭の特徴が以下の通りです。
- 生活リズムが安定している(朝食を毎日しっかり摂り、起床・就寝時間が一定、テレビ・ゲーム・ネットなどの使用時間のルールが決まっている)。
- 読書をするように働きかける。小さい頃は本の読み聞かせをしていた。
- 子供の勉強を普段からみている。
- 博物館、美術館、図書館に子供と一緒に行くなど、文化・芸術面に関心を寄せ、子供に体験活動を働きかける。
- 子供の身の回りのことなどに触れ、普段からコミュニケーションを取る。
鍵は“学校全体の努力”
学校全体で学力の底上げを図っている学校には共通の特徴があります。
- 基礎・基本の徹底、少人数指導。
- 授業を『聞く』だけに留めず、『話す』こと、『書く』ことを徹底させる。読書を習慣づけさせる。
- 家庭学習(宿題、自主学習)の指導を充実させ、教員との活発なコミュニケーションを図る。
- 積極的な学力調査の活用。
- 小・中連携の取り組みを図る。
- 教職員間のコミュニケーション・研修の充実。
これらに積極的に取り組んでいる学校はSESで予測される学力レベルを上回る成果をあげています。
家庭や学校の取り組み方次第でいくらでも子供の能力が引き伸ばされるんですね。
学べる環境を作ってあげよう
子供の勉強に対する能力は遺伝よりも後天的な環境に大きく左右されるという事を解説して来ました。
「勉強しろ。」と口うるさく言うことは教育ではありません。
まだまだ親と一緒に居たい年頃の子供と積極的にコミュニケーションを図ること。これが自然と勉強する力を身に付かせることに繋がります。
たくさん子供と話して出掛けましょう。