「叱る」「怒る」の違いと、子どもを怒らない親になる方法あれこれ
「叱る」と「怒る」の違い、なんとなくわかる。「叱る」はよいけど「怒る」はダメ。
でも、いつも怒ってしまって反省…気持ちはよくわかります。
ここでは、小学校での勤務経験があり二人の子の母親でもある筆者が、「叱る」と「怒る」の違いをわかりやすく解説。NGな叱り方や効果的な叱り方、なるべく怒らないための対策についても、お伝えします。
今日から「怒る」回数を、きっと減らせますよ!
「叱る」と「怒る」の違いをおさらい
初めに、「叱る」と「怒る」の違いを簡単におさらいしましょう。
辞書の意味としては同じ?
辞書の意味は以下の通りです。
「叱る」
相手のよくない言動などを指摘して、強くとがめる。
「怒る」
【1】 不満や不快なことがあって我慢できない気持ちを表す。腹を立てる。いかる。
【2】 よくない言動を強くとがめる。しかる。
「怒る」の【2】の意味と「叱る」の意味は一緒!「怒る」の中に「叱る」も含まれている位置づけです。
じゃあ「違い」は何?
教育や育児、コミュニケーションの世界では、「叱る」と「怒る」は違うと言われています。
- 「叱る」…相手をよりよい方向に導くために指導すること
- 「怒る」…自分のイライラや不満を相手にぶつけること
「叱る」は、相手のことを思って注意やアドバイスをすることです。強い口調や声を荒げて叱ることもあるでしょうが、それは相手のために「あえて」していること。
子どもには、効果的に「叱る」
よって子どもには、効果的に「叱る」ことが大切です。
親のストレスや不満、イライラをぶつけるだけの「怒る」では、
- その場の雰囲気が悪くなる
- 子どもの自己肯定感を低くする
- 親の姿から子どもも「怒る」ことを学ぶ
など、逆効果になることもあるのです。
怒ることは、なんと消化器や血液にも悪影響!親御さんの体にもよくないのですね。
NGな叱り方4選
まずお子さんを叱る際の「NG」を、4つにまとめます。普段の叱り方、チェックしていきましょう。
子どもの人格を否定
叱っているうちに、「子ども全体を否定する言葉」が出ていませんか?
- あなたは何をやってもダメ
- 本当に悪い子だよ、おまえは
- どうせ無理、何もできない子だからね。
これらは子どもの自己肯定感を低くする言葉。子どもが自信をなくし、意欲ややる気の低下につながるのです。
叱る範囲を広げる
何かに対して叱っているうちに、いつのまにか範囲が広がっていませんか?
- いつも同じことを言わせないで!
- 前にも似たようなことで叱られたよね
- あれもダメだし、これもダメだよね!
他の子と比較する
叱っているうちに、よくできるお友達や兄弟姉妹と比較することはありませんか?
文部科学省のサイトでは、9歳頃から発達の個人差が大きくなり、劣等感を持ちやすくなると言われています。
親御さんに誰かと比較されて叱られると、劣等感が助長されやすくなります。
命令口調や押さえつける言い方
意識をしないと、どうしても命令口調や厳しく押さえつけるような叱り方になりがち。
- 早く宿題をしなさい!
- しっかり食べなさい!
- どうしてやらないの?早くやりなさい!
言葉だけでなく、叱る表情がすごく怖いかも。無意識のうちに声を荒げ、言い方がきついかも…。こんな叱り方は、
- 子どもの反抗を助長させる
- 子どもが自己主張せず、消極的な性格になる
- 子どもが友達に同じような口調をしてしまう
可能性があるのです。
効果的な叱り方6選
では効果的な叱り方は?…コツは、ズバリ「シンプル」。応用編も含め、6つにまとめます。
すぐ叱る
できるだけ、その場ですぐに叱りましょう。
人間は忘れる生き物。後になればなるほど子どもは内容がわかりにくく、効果が薄くなるのです。
短く叱る
叱る内容は、できるだけ「短くわかりやすく」まとめましょう。
- 「ここで遊ぶことはやめよう。危ないからね。」
- 「今の言い方はやめようね。自分も言われたら傷つくと思わない?」
など、「叱る+理由」を言いましょう。
そのことだけを叱る
叱る時は、そのことだけを叱りましょう。
前述の通り、
- 他のことも持ち出してダラダラ
- 過去の件も蒸し返してダラダラ
- 他の子と比較してダラダラ
では、効果が薄くなります。子どもは何を叱られているのかがわかりにくく、「自分は叱られてばかりだ」と自信もなくしてしまいます。
今後の対策も教えられるとよい
どうすればよかったのか、子どもがわからない場合もあります。
- 「これからは、○○が欲しいと言葉で言ってね」
- 「今度からは、まずお母さんに聞いてからにしよう」
など、叱った後に対処の仕方をきちんと教えられると、よいでしょう。
状況に応じた叱り方を考える
ここからは叱り方の応用編です。日々子育てをしていれば、叱る内容もさまざまでしょう。
内容に応じて叱り方を変えることで、子どもは「何が本当に大切か」を学ぶことができます。たとえば、
- 子どもが友達をひどくいじめている
- 友達の文房具やゲームソフトを勝手に持って帰る
- 注意してもたびたび火遊びをしている
などは、きつく叱った方がよいでしょう。周りから見て「ひどく怒っている」ように見えてもかまわないと思います。「絶対にしてはいけない」と、子どもに教える必要があるからです。
しかし、日常的に叱っていることの多くが「そんなにきつく叱る必要がない」こともあるもの。
- 片付けない
- 宿題を後回しにする
- 挨拶や返事をしない
これらは顔色を変えて怒るより、根気強く言い聞かせていく方がよいかもしれません。しかも「学校ではきちんとやっている」というお子さんもいると思います。
その子に合った叱り方を考える
同じ言葉、同じ叱り方。それでも「受け取り方」は、子どもによってだいぶ違います。
たとえば、比較的きつく叱った方が効果的な子もいれば、恐怖心だけが植え付けられ逆効果な子もいるのです。
日頃からお子さんの様子をしっかり観察し、お子さんの性格やキャラクターを熟知しておけるとよいでしょう。
といっても、なかなか難しいですよね…。なので、きつく叱ることに注意が必要な子をまとめてみます。
- 気が小さく、メンタルが弱い子
- 何を言っても反発してくる子
- 家庭以外でもきつく叱られることが多い子
「少し注意されただけで落ち込む」「不安や恐怖が強く、叱られると消極的に」…。こんな子は極力叱らず、「アドバイス」や「教える」ことにとどめた方がよいです。
何を言っても反抗ばかりの子には、親側もついカッとなりがち。さらにきつく叱り、しまいには感情的に怒ることも少なくないと思います。
しかし、表向きは反発していても、心はナイーブで傷ついている場合が多いもの。どんどん怒られることで、どんどん傷ついてしまうのです。
家庭以外で叱られることが多い子も、注意が必要です。「叱られてばかり」「僕・私はダメな子」という意識が、どんどん子どもに植え付けられていきます。
これで、なるべく「怒らない」親に!
わかっているのに怒ってしまう…気づけたことが第一歩!努力をすれば、怒る回数をきっと減らせます。叱りはするけど怒らない親に、なってもよいのです。
感情を抑えられる方法を試す
「つい感情的に」「叱っているうちに、だんだんイライラが爆発」…筆者もそうでした。感情を抑える方法を試しながら、今も怒らないよう努めています。
- 深呼吸したり「1,2,3,4,5」と数えたりする
- 怒りやイライラを追い払うイメージを描く
- 口角を上げる
- 癒される画像や好きな物に目を向ける
- 心の中で独り言をつぶやく
- その場を離れる
怒りそうになったら上記のことを行うのです。すべてに「間をつくって切り替える」意味があります。1つずつ簡単に解説します。
深呼吸には、リラックス効果もあるのでオススメ!声に出してゆっくり「1,2,3,4,5」と数えるのも、強制的に間をあけられますよ。
怒りやイライラを鬼などに見立て、「消えろ!」と追い払うイメージを描くのも効果的。頭の中で鬼がサーっと逃げて行ったら、怒りもなくなっている、はず…。
口角を上げると、笑顔もしくは柔らかい表情になりませんか?先に表情をつくることで、その表情筋の動きが脳にフィードバックされ、怒りが静まりやすくなるのです。
怒りがおさまりやすくなる物を見るのも、試す価値あり!大好きな芸能人の写真やキャラクターグッズなどを、目につく所に置いておきましょう。
怒る前に心の中、もしくは小声でつぶやくのもよいかもしれません。
- 「なんと面白い!また同じことをやっています。」
- 「また怒られたいのか、それとも理解していない?」
- 「あの子も学校でいろいろ疲れているのかな…。」
実況中継のようにつぶやくことで、客観的に子どもを見ることができ、気持ちがおさまりやすくなります。
また、「子どもも疲れてムシャクシャしているのかな」など、子どもの目線で考えるのもオススメ。子どもの気持ちに寄り添えますよね。
自分に合う方法が、みつかるとよいですね。
ストレス発散・解消に努める
感情むき出しで怒りやすい人は、日頃のストレスをぶつけている場合も多いもの。
ストレスの原因がわかっている場合は、それを取り除けるよう努めたいところです。
できるだけ体によい、ストレス発散・解消方法をみつけましょう。
- 無理のない範囲で運動する
- 身近な自然に触れる
- 質のよい睡眠をとる
生活の中に「余裕」をつくる
家事や子育てに加え、仕事、PTAなどの役員や活動、介護など…。何かと忙しい親御さんも、多いのではないでしょうか?
余裕がないと、どうしてもイライラし怒りがちに…。生活の中に、「余裕」を意識してつくっていきませんか?
- 「少しだけゆっくり」を心がける
- 意識して「休憩」の時間をつくる
- 深呼吸をする習慣をつける
何事もせかせか焦って行動していませんか?呼吸が浅くイライラしやすくなります。焦ると上手くいかず、余計に時間がかかることもありますよね。
必ずしも「落ち着いている=行動が遅い」ではありません。焦りがちな人は、すべての行動を6~8割のスピードで行えるよう意識してみましょう。
普段の行動を「少しだけゆっくり」行うことで、リラックス時に働く副交感神経が優位になります。つまりイライラしにくくなるのですね。
忙しい生活の中にも、数分の「休憩」や深呼吸の習慣を意識的につくる。筆者も体験済ですが、これだけでだいぶ違いますよ!
すべて100点を目指さない
性格的にすべて完璧を目指す。そんな親御さんもいると思います。
「子どもを完璧に育てたい!」だけでなく、家事も仕事もPTA活動も、それにまつわる人間関係も…。すべてを完璧にやろうとすれば、やはり疲れやすくイライラを招きやすくなります。
性格なので、すぐに変えろと言われても難しいでしょう。しかし思考をほんの少し変えることは、できるかもしれません。
- 家事を少し手抜きしても支障はない
- 今あるものに目を向け感謝することも大切
- すべてに完璧な人間なんているの?
家事は、ご主人や同居の両親が厳しい場合もあるかもしれませんね。しかし、工夫次第で上手く手を抜ける部分をみつけてみませんか?
完璧を目指して頑張るのも素敵ですが、今あるものに目を向けて感謝することも大切だと思います。
親御さん自身の仕事や人間関係、家庭のこと…。今あるものに感謝する。お子さんが「今できていること」にも、きちんと目を向けましょう。
- 子どもが学校に通えている
- この子なりに成長している
- 国語や算数は苦手だけど、優しい子に育っている
など、今は当たり前でも、そうでなくなる可能性もないとは言えないのです。
事実、筆者の友人の子は、厳しく育てていたところ中学で不登校+ひきこもり。今は「とりあえず学校に行ってくれれば何も望まない」と口にしています。
ないものばかりに目を向け、すべてに100点を求めて厳しくする。親子共に疲れやすく、幸せを感じる場面が少なくなる場合もあるのかもしれませんね。
アイメッセージを心がける
感情的に怒っている時は、指示や命令が多くなりがち。反対に指示や命令口調をやめるよう意識するだけで、怒りにくくなるとも言えるのです。
そこでお勧めするのが「アイメッセージ」。
- 「自分からやってくれると、お母さんは助かるなぁ」
- 「今の言い方、お父さんは傷ついたぞ」
- 「宿題を早く済ませると、自分が後でラクだと思うよ」
これらの言葉は「自分からやりなさい」「宿題を早くしろ!」と違い、主語が親側になっています。これを「アイ(I)メッセージ」と呼び、印象や雰囲気が柔らかくなるのです。
メリットとして、
- 子どもが主体的に行動しやすくなる
- 子どもの反発を招きにくい
- 親自身の気持ちも穏やかになりやすい
ことが挙げられます。もちろん上手くいかないこともありますが、筆者もアイメッセージを心がけることで自分に余裕が生まれたり、子どもの心に響いた実感を得られたりすることが多くありました。
叱り方のバリエーションの一つとして、今日から加えてみませんか?
自分にもできる!
「今日から全く怒らない!」は無理にしても、怒る回数を減らすことなら十分できると思います。
それでも怒ってしまったら…?素直に「ごめんね」を言いましょう。子どもの傷を、その場で癒せますよ。
そして日頃、お子さんに愛情を注いであげれば大丈夫。
- 小さなことでも褒める
- 子どもの話をよく聞く
- スキンシップを図る
ギューっと抱きしめるのは「やめて!」と言われる?褒める時に頭をなでたり、話す時に肩や背中に手を添えたりするのも、効果的なスキンシップですよ。
完璧な親に、ならなくてよいのです。少しだけ怒る回数を減らし、私たち親も成長できるとよいですね!
最後までお読みいただき、ありがとうございました。