小学校のトイレに行けないのはなぜ?3つの理由から考える改善策
お子さんと排泄について話していますか?
「全然話していない」という人もいるかも知れません。
じつは、排泄について子どもと話すことが、健康状態を把握する第一歩となるのです。
学校のトイレ事情をのぞくと、まだ和式トイレが多く設置されている学校があります。
2016年に文部科学省が発表した「全国公立小中学校のトイレの洋便器率」では、全便器140万個のうち、洋式トイレは61万個という結果が出ました。
まだまだ和式トイレが多いことが分かります。
それなのに、和式トイレに馴染みのない子ども達は多く、トイレの使用を控えた結果、便秘しやすくなるのです。
ここでは、学校でトイレに行けない理由を3つ取り上げ、その改善策を4つご紹介します。
学校で用を足せない子ども達 「トイレに行けない症候群」とは
お子さんは、学校から帰ってきて、慌ててトイレに駆け込むことはありませんか?
もしかしたら、学校でトイレに行くのを我慢しているのかもしれません。
近代化の流れで綺麗な洋式トイレが普及している一方で、昔からある学校のトイレは和式トイレのままの所が多いです。
年数の経った和式トイレは、汚くて臭いというマイナスのイメージが強く、子どもが行きたがりません。
こうした理由から、学校のトイレに行けない子どもが増えており、「トイレに行けない症候群」と呼ばれています。
また、トイレだけの問題ではなく、子ども自身が「学校でトイレに行くのは恥ずかしい」と感じている場合もあります。
子どもによって、学校のトイレに行けない理由はさまざまです。
行きたいのに行けない!学校のトイレに行けない理由
子どもが学校のトイレに行きたがらない理由は主に3つあります。
- 和式トイレしかない(汚い、臭い)
- トイレに行くのが恥ずかしい
- 排便時の音や始末が気になる
それぞれの理由を詳しく見てみましょう。
【和式トイレしかない(汚い、臭い)】
トイレがすべて和式トイレという学校もまだあるため、和式トイレに慣れていない子は大きなストレスになります。
さらに、洋式トイレに比べて、おしっこが飛び散りやすい和式トイレは汚くなりやすく、快適に用を足せないことがあります。
TOTOなど、トイレ関連企業が7社集まって1996年に発足した「学校のトイレ研究会」では、トイレに関するアンケート調査を行っています。
トイレ改修を行った学校の児童166名(男子82名、女子84名)に「トイレについて普段感じていること」をアンケートした結果、以下のような回答が得られました。
- トイレの臭いが気になる…152名
- トイレが汚れていることが多い…134名
- 学校で大便(うんち)をすることに抵抗がある…83名
- 家と便器が違うので使いにくい…81名
- トイレに行くのを我慢してしまうことがある…75名
- トイレに行きにくい…53名
多くの児童が、改修前の和式トイレに対して、「臭い」や「汚さ」を気にしていることが分かります。
また、和式トイレで大便をすると、なかなか流れず困ったり、からかわれたりすることから、抵抗感を持つ児童が約半数いるのが分かります。
しかし、洋式トイレに改修してから同じアンケート調査を行ったところ、以下の結果が得られました。
- トイレの臭いが気になる…21名
- トイレが汚れていることが多い…51名
- 学校で大便(うんち)をすることに抵抗がある…21名
- 家と便器が違うので使いにくい…15名
- トイレに行くのを我慢してしまうことがある…31名
- トイレに行きにくい…5名
洋式トイレになったことで、トイレに対する嫌なイメージが減少したのが分かります。
また、綺麗で明るいトイレは、からかいの場になりにくく、子ども達の「恥ずかしい」という気持ちが起こりにくくなります。
【トイレに行くのが恥ずかしい】
トイレにマイナスのイメージを持っていると、トイレに行くのが「恥ずかしい」という気持ちが起こります。
特に、男の子は大便のために個室に入らなくてはならず、冷やかしやからかいの対象になってしまうことがあります。
【排便時の音や始末が気になる】
学校のトイレが使われる時間は、休み時間に多く集中するため、トイレに人が集まります。
そんななか、排泄する音が響いたら、とても恥ずかしいですね。
特に、和式トイレでは、慣れていないと衣服にかからないように気をつけながら、おしっこを便器の中に集中させるのは至難の業です。
また、水洗が弱いと大便が流れにくく、便器に残ってしまうなどして、非常に厄介です。
流そうとして、トイレットペーパーを重ねたあげく、トイレを詰まらせてしまうこともあります。
こうした排便時の音や始末は、子どもにとってかなりのストレスです。
それでは、トイレに行けるようにするにはどうしたら良いのでしょうか。
次の項で、改善策を探っていきましょう。
どうしたら快適に用を足せる?トイレに行くための改善策
小学校にいる間は、トイレに行かないようにするため、水分を口にしないという子がいます。
しかし、排泄を我慢することや、水分を摂らずにいることは、健康上よくありません。
子ども達がトイレに行きたがらない理由から、どう改善したら良いのか考えていきましょう。
・和式トイレしかない(汚い、臭い)
・トイレに行くのが恥ずかしい
・排便時の音や始末が気になる
学校のトイレに行けない理由として3つ挙げられました。その改善策として4つの方法をご紹介します。
改善策1 トイレの改修
マイナスイメージの強い和式トイレを一新することで、トイレを我慢する子を減らす事ができます。
しかし、トイレの改修には費用も時間もかかります。
費用面では、学校のトイレ単独改修(400万円以上)には、国庫補助が適用されます。経費の一部を国が負担し、改修することができます。
そこで、保護者の立場でできることと言えば、まずは「声をあげること」です。
学校アンケートや町民(市民)アンケートなどで、トイレの改修について希望を出しましょう。
学校のトイレは、災害時の避難場所としても使われます。子どもはもとより、高齢者や幼児などが使いやすいトイレが理想的です。
改善策2 和式トイレに慣れさせる
家では洋式トイレを使っているのに、いきなり和式トイレを使えと言われても、無理があります。
まずは、和式トイレのある所に行って、一緒に和式トイレの使い方を確認してあげましょう。
すでに苦手意識を持っている子は、和式トイレに誘っても入りたがらないので、トイレに親しむことから始めてみてください。
以下の絵本は、和式トイレが出てくる絵本です。
著・村上八千世
イラスト・せべ まさゆき
出版社・ほるぷ出版
価格は1,300円(税別)で、和式トイレの使い方がイラストでわかりやすく描かれています。
原寸大の「れんしゅうトイレ」がついていて、イメージが湧きやすくなっています。
最近では、筋肉が弱くなって「しゃがむ」体勢を維持することが難しい子もいるので、練習しましょう。
また、実際の和式トイレで練習するときは、汚さないためのコツを一緒に教えると良いでしょう。
●大便の前に、トイレットペーパーを2重にしたものを便器の中に敷く
●なるべく前の方に座る
あまりたくさん教えすぎると、混乱してしまうので、この2つを教えておくと安心です。
普段の生活でも、和式トイレのあるところに出かけたり、トイレの絵本を身近に置いたりして、苦手意識をなくすように心がけてください。
改善策3 排泄の重要性を教える
トイレに行かない子どもは、「我慢できるから大丈夫」と思っているかも知れません。
しかし、トイレを我慢することは体にとってよくありません。
トイレに行きたくないからといって、水分を飲まずに過ごしていると、腎臓に負担がかかってしまいます。
また、尿意を我慢したままでいると、膀胱に長時間おしっこを溜めておくことになり、尿路感染症を引き起こす可能性があります。
さらに、トイレに行かず、排便を習慣的に我慢していると、便秘になってしまいます。
「NPO法人 日本トイレ研究所」が2017年の3月に行ったネットアンケートでは、全国47都道府県の小学生4,777名を対象に「小学生の排便と生活習慣に関する調査」を行いました。
その結果、小学生の6人に1人(16.6%)が便秘になっており、3人に1人(37.3%)が便秘予備軍になっていることが分かりました。
便秘になると、お腹が張ったり食事が食べられなくなったりして、生活の中でも支障があらわれます。
ひどくなると、吐き気や頭痛に悩まされたり、排便痛がおきたりと、良いことがありません。
このように、腎臓に負担がかかること、尿路感染症を引き起こすかもしれないこと、便秘になってしまうことは、子どもの体に辛い結果を引き起こします。
こうしたことが長引くと、大人なら大変な病気につながると認識できますが、子どもにはもう少しわかりやすく伝える必要があります。
とはいえ、毎日の忙しい中で一つ一つ教えていくのは大変ですね。
低学年の子どもでもわかりやすい絵本を用意して、読み聞かせたり、自分で読んでもらったりしましょう。
排泄についてわかりやすく描かれた絵本は以下のものがあります。
著・村上八千世
イラスト・せべ まさゆき
出版社・ほるぷ出版
『うんちはどうしてでるの?(やさしいからだのえほん)大型本』
イラスト・せべ まさゆき
出版社・学研
「食育」は多くの学校で取り入れられていますが、「排泄」についての学習は目立ったものがありません。
しかし、食べることと同じように、排泄は大切ということを子どもに知ってもらうようにしましょう。
改善策4 人がいないときにトイレに行く
「トイレに行きたくても、人がいるトイレは行きたくない」という子もいます。
先ほど、お伝えしたように、排泄音がしたり、トイレを汚したりして、人に知られるのが恥ずかしいと感じてしまうのです。
そんなときは、担任の先生と相談して、授業中に催したときにトイレに行かせてもらうようにしましょう。
授業中なら、他の子は授業を聞いているので、「からかい」を気にしている子でも安心してトイレで用をたせます。
何度か学校のトイレで排泄する経験を踏めば、人がいる休み時間でもトイレに行けるようになります。
子どもに、学校でのトイレはどうしているのか聞いてみて、我慢ばかりしているようなら担任や保健の先生にサポートしてもらいましょう。
「トイレ」が会話になる雰囲気作り 子どもの排泄状況を知ろう
小学校の和式トイレがもつ、マイナスのイメージから、「トイレに行けない症候群」の子どもがいることがわかりました。
お子さんは家に帰ってきて、どんなことを話しますか?
楽しかった授業や、友達との会話、おいしい給食のことなどを話す子はいても、排泄について真っ先に話し始める子は少ないでしょう。
もし、学校のトイレに行けず我慢しているようなら、トイレに行けない理由を聞いてみて下さい。
今回取り上げた3つの理由が出てくるかもしれません。
・和式トイレしかない(汚い、臭い)
・トイレに行くのが恥ずかしい
・排便時の音や始末が気になる
もし、これらの理由が出てきたら、以下の改善策をとってみましょう。
- 改善策1 トイレの改修
- 改善策2 和式トイレに慣れさせる
- 改善策3 排泄の重要性を教える
- 改善策4 人がいないときにトイレに行く
そして、どの改善策をとるにしても、親は子どもの排泄状況について把握しておくことが大切です。
「今日はたくさんうんちがでたよ」
「学校ではトイレに行けなかったよ」
という話が、家庭の中で自然と出ると対策を考えやすくなります。
また、日常的に親子で排泄について話をすることで、排泄の大切さを認識することができます。
親が恥ずかしがると、子どもにもそう伝わってしまいます。
「健康状態を知るうえで大切なこと」という意識をもち、会話にしやすい雰囲気を作っておきましょう。
もし、忙しくて食事の時しかゆっくりと会話できないなら、トイレに排泄カレンダーを貼っておくのも手です。
排泄カレンダーは、通常の月別カレンダーを活用して、排泄したらスタンプやシールを付けていくものです。
排泄の回数が多ければ、「正」の字を書いて回数を表すことができます。
なかなか、排泄についての会話ができないときは、試してみて下さい。
子どもたちが元気で健康な体を作れるように、子どもの声に耳を傾け、サポートしていきましょう。