小学生の暗記力を高める方法。脳を上手に利用して暗記を得意に!


暗記力を高めると、学力向上につながる!でも、どうすればよいのかわからない小学生の親御さん。

コツは、いかに脳の仕組みを利用するかです。塾講師や小学校での勤務経験がある筆者が、それに基づいた暗記法をご紹介します。

中学受験や最近の小学校の学習内容は「思考力」も大事。といっても、やはり暗記力を高めれば有利になります。

早速お子さんと実践し、まずは学校や塾のテストで目に見える成果を出しましょう!

暗記力とは

暗記力を高める方法を知る前に、まず「知っておきたい」3つのことを、お伝えします。

「覚える力」と「引き出す力」

「暗記力」=「覚える力」と思いがち。しかし「まず覚えて、それを後で思い出し、書いたり話したりできる力」。これが暗記力の本質です。

一度覚えたことを、忘れるのは仕方がない。心理学者エビングハウスの記憶に関する実験でも、全く復習しなければ、

  • 1時間後には56%
  • 1日後には74%
  • 1週間後には77%
  • 1ヶ月後には79%

のことを忘れるとされています。個人差は当然ありますが、時間と共に忘れるのは事実なのですね。

個別指導の塾で講師をしていた時、「うん、覚えた」と口で言っても、後で書けない、言えない子。反対に、勉強ができる子、暗記が強い子は、覚えたことを「思い出して引き出せて」いました。
暗記が得意な子は、脳に強く記憶させたり、こまめに思い出す・見返すことをしたりしています。意識的に努めている子もいれば、無意識でそれをしている子もいるのです。

最近は思考力重視?

とにかく暗記力を高めれば、中学受験に勝てる!…こう思う人もいるかもしれませんが、実は危険です。

難関中学の受験経験者の、「暗記力は1割程度。暗記でできるのは基本問題のみで、応用問題に必要なのは思考力」という声もあります。

また小学校でも、最近は基本的な知識・技能に加え、それを活用して課題を解決するために必要な「思考力・判断力・表現力」にも、重きがおかれています。

といっても、暗記が必要な場面も多いのは事実。中学受験でも、暗記力がある方が有利なことはたしかですよね。

暗記力は、成果が出やすい

思考力も大事だと先に述べましたが、心理学で「思考」とは、「観察や記憶により頭に入った内容を関連づけ、新しい関係をつくり出す働き」と、みなされています。

思考力を鍛えるには、とにかく「考える」ことです。

  • 本や新聞を読みながら
  • 先生や友達と議論をしながら
  • 人間観察や自分を客観視しながら

「どうして?」「こうすればこうなるかもしれない」など、考える習慣をつけることが必要です。パズルやボードゲームもよいですね。

ただ、思考力はすぐに高まるものではありません。今日から考える習慣をつけて、1ヶ月後に目に見える結果が出る、ということは少ないです。

その点、暗記力は工夫と実践しだいで、目に見える結果が出やすいと言えます。短期間で成果が見られることも多く、モチベーションにつながるでしょう。

「覚える力」を高めるには

「覚える力」を高める工夫の仕方を、5つご紹介します。まず覚えなければ、その後引き出すこともできません。

繰り返し書く

人間の脳は、すべてのことを覚えられるわけではありません。しかも、時間と共に忘れていくのは前述の通り。

「これを覚えるんだ!」「暗記するぞ!」という強い意志を持って暗記をした方が、当然脳に残りやすくなります。

国語の漢字、国語以外でも覚えにくい言葉などは、「覚えるぞ!」という意志のもと、何度も繰り返し書きましょう。

実際のテストも、マークシートでない限りは「書く」必要があります。正しく書けなければ、点数にならないわけですね。

間違えたまま繰り返し書くことがないよう、確認しながら書きましょう。

繰り返し声に出す

人間の脳は、五感を使うと記憶に残りやすくなります。「ただ見ているだけ」の状態は視覚のみ。記憶に残りにくいです。

声に出すことは「視覚」と「聴覚」を使いますね。同時に、「口を動かす」という感覚も加わり、これを繰り返すことが効果的です。

誰にでもわかりやすい例が、算数の「九九」でしょうか。九九を覚えようとする時、一度唱えただけでは通常覚えられません。

「覚えにくい7の段は、嫌になるほど繰り返した」などという人もいるでしょう。自分にとって覚えにくいことほど、たくさん繰り返し声に出しましょう。

国語のことわざ、社会の年号なども、繰り返し声に出すと暗記しやすくなります。

オススメは、たとえば暗記したいものが10個ある場合、①~⑩までを1回ずつ声に出し、また①に戻って①~⑩までを1回ずつ声に出す。これを繰り返す方法です。
勉強するお子さんを見ていると、①を何度も繰り返し、完全に覚えてから②へ進む、という方法が多かったです。これだと、②を覚えている時にはすでに①を忘れてしまうことが起きがちです。

セットで繰り返す方が効果的、と覚えておきましょう。

部屋に付箋や表を貼る

毎日見ている物は、覚える気がなくても覚えてしまいます。たとえば通学路にあるお店や看板、毎朝流れるテレビCMなどがあるでしょうか。

眠っている時以外、人間の脳は絶えず働いています。目に触れた情報は、嫌でも脳に刻まれるのですね。

もちろんボーっとした状態で一度しか見なかった物は、高確率で忘れるでしょう。しかし「毎日」「頻繁に」見ている物は、勝手に記憶される可能性が高くなります。

これを利用するならば、暗記したいことを付箋に書いたり表にまとめたりして、自宅内に貼っておけばよいのです。

  • 覚えにくいことほど複数の箇所に貼る
  • 特に覚えたいことは付箋の色を変える
  • 強調したいことは文字の色や字体を変える

など、記憶に残りやすくなるよう、工夫できるとよいですね。

「部屋のインテリアもあるし…」という場合は、必ず1日1回は目にするお風呂やトイレだけに貼るのも一つ。お風呂の場合は、ネットでも買える「耐水紙」を使用したり、100円ショップなどで売られているジッパー付きビニール袋に紙を入れたりして貼るのもよいでしょう。

何かと結びつけて覚える

印象深かったことは、脳の中に残りやすくなります。つらかった記憶などは、忘れたくても忘れられない、ということがないでしょうか?

反対に「すごく楽しい!」「興味がある」ことも、記憶に残りやすいと言えます。

これを利用するならば、以下のような工夫の方法が挙げられるでしょう。

【1】  自分の身近なことと結びつける
【2】  イラストや落書きと結びつける
【3】  音楽・リズムと結びつける

たとえば【1】は、ことわざ。「さるも木から落ちる」→「サッカーが大得意な○○くんも、昨日シュートをはずしたな」など、各ことわざに身近な人物を主人公にした物語をつくるのです。

他にも「徳川家康の顔、あの先生に似ている」と結びつけたり、覚えたい植物の名前の頭文字をつなげて身近な文字にしたり…。ユーモアを交えながら実践しましょう!

絵を描くのが好きな子は、覚えたい物のイラストを描くのもオススメ。文字よりも絵や表・グラフの方が脳に残りやすいですし、自分で手を動かして描けばなおさら!

社会で出てくる名産物や歴史上の人物、理科で出てくる植物のつくりや人と動物の体など、楽しみながら覚えられそうですね。

音楽好きな子は、替え歌づくりや作曲をしてしまうのも!リズムに合わせて、暗記したいことをラップ調に歌うのも面白いですよ!

歴史の年号などの有名な「語呂合わせ」も、リズムのよいものが多いですよね。

個人的な体験と結びつける

環境を変えて暗記に臨むのも一つです。

  • 勉強する場所を変える
  • 誰かと一緒に勉強する
  • 歩きながら暗記する

たとえば図書館で勉強したり友達と一緒に暗記したり。個人的な体験が結びつくと、記憶に残りやすくなるのです。

歩きながらの暗記も同様です。しかも歩いている時は脳の血行がよくなり、脳の機能も高まります。

同時に記憶の中枢である「シータ波」という脳波が出てきて、記憶しやすい状態に!ただ、外を歩く際や階段の上り下りの際は、十分気をつけながら行いましょう。

覚えたことを「引き出す」には

覚えたつもりでも、「思い出せない、書けない」のでは意味がありません。効果的に引き出せるよう、訓練できるとよいですね。

とにかく復習!

たびたびお伝えしていますが、強い記憶でない限り、人は忘れていく生き物。とにかく、復習をすることです。

一度「覚えたぞ」と思ったことを、数時間後に復習、翌日にも復習、3日後、1週間後にも復習!…脳に刻み込んでいきます。

記憶が消去されにくく、脳の中に定着しやすくなるのですね。実際のテストの時にも、「忘れてしまって引き出せない」可能性が低くなります。

繰り返しテストを行う

本当に覚えたか、引き出せるか、直後に書き出したり口に出したりしてみます。引き出せなければ、当然暗記のやり直しです。

直後がクリアできれば、数時間後、翌日、3日後、1週間後と、とにかくテストしてみます。引き出せなければ、その時にまた覚えます。

前述の復習もテストも、「引き出す力を高める」というよりは、地道に努力する方法…。しかし勉強ができる子は、意識的・無意識的問わず、この作業をやっていることが多いのです。

人に教える

暗記したことを「人に話す」のも効果的です。

「授業内容を半年後にどれだけ覚えているか」。学習スタイル別で比較した、アメリカの調査があります。たとえば、

  • ただ講義を聞くだけ…5%
  • 読書…10%
  • 視聴…20%

受け身の授業では、定着率が低いことがわかります。それに対し、

  • グループディスカッション…50%
  • 自ら体験する…75%

そして、なんと「他の人に教えること」は、授業内容の95%を覚えていたのだそうです。

筆者の高校時代、テスト前の休み時間は、ある優秀な友達の席にいつも行列。皆わからないところを彼女に聞くのです。

彼女に「○○さんも勉強したいだろうに、ごめんね。」と言うと、「私もみんなに教えることで、より覚えられるんだ!」と笑って言ってくれました。

お笑いコンビ「ロザン」の宇治原史規さんは京都大学出身。宇治原さんも「自宅で自分が先生になったつもりで架空の友達に教える、という記憶定着方法を図っていた」とテレビで言っていました。

暗記したことをお子さんが親御さんに話す、これだけで強く記憶に残るのです。覚えたことを引き出す力にも、つながりますよね。

クイズを出す

「テスト」と言うと、拒否反応を示すお子さんも多いかもしれません。親御さんが「クイズ」を出すのは、どうでしょうか?

  • 「月の表面にある丸いくぼみって何て呼ぶ?」
  • 「北極と南極の中間を通る線ってな~んだ?」
  • 「猫に小判と同じような意味のことわざを2つ挙げよ!」

楽しみながら行うコツは、お子さんが答えられなくても「叱らない」ことでしょうか。そして答えられた時は、大げさにでも褒める!

お子さんが反抗期の場合など難しいかもしれませんが、暗記に対して意欲的になれる方法がみつかるとよいと思います。

生活習慣も大事?

睡眠や食事などの基本的な生活習慣も、暗記力と関係があるのでしょうか?

暗記力と睡眠のかかわり

睡眠中、人間の脳は「休んでいる時間帯」と「動いている時間帯」があるのをご存知ですか?

動いている時間帯は、記憶の整理をしています。すなわち睡眠の直前に覚えた知識を、脳は「重要」と判断しやすく、記憶が定着されやすいと言われています。

たった10分でもOK!寝る直前に暗記しましょう。翌日起きた直後に復習できると、より効果的です。

また、睡眠不足は脳の働きに大きな影響を与えます。「眠い」「だるい」状態では、記憶力や集中力が低下。誰でも実感としてわかることだと思います。

十分な睡眠時間の確保と、良質な睡眠がとれる工夫をしていきましょう。

暗記力を高める食事

栄養バランスのとれた、規則正しい食生活。これを大前提とした上で、暗記力を高める食べ物をご紹介します。

  • 青魚(サンマ、サバ、イワシ、ブリなど)
  • 大豆製品(納豆、豆腐など)
  • チョコレート
  • ココア
  • ナッツ類

工夫方法として、たとえば暗記する15~60分前ぐらいにチョコレートを食べる。おやつはココアとナッツ、その後勉強に取り組む…。

ただ、たくさん食べたから効果が高い、ということはありません。チョコレートなら板チョコの4分の1程度、ココアは1杯にとどめましょう。

また、朝食をとると暗記力が高まる、という研究結果もあります。どんなに忙しくても、朝食を抜くことだけは避けたいですね。

その他、暗記力を高めるために大切なこと

適度に体を動かすことも、暗記力を高めるために大切です。10分間の運動後の方が、記憶力が向上するという実験結果もあるほど。

日頃体を動かす習慣が少ないお子さんは、意識できるとよいですね。

集中力の持続についても考えたいところです。脳科学的に、人間が深い集中力を保てるのは「15分」と言われています。

ダラダラ暗記していても、時間ばかりで頭に入っていない可能性もあります。お子さんに合った勉強時間やメリハリのつけ方も、意識できるとよいでしょう。

また、どんなに効果的な暗記法や生活習慣を心がけても、親御さんがお子さんの心を受け止めていないなどの場合、効果は半減してしまうでしょう。

反抗期などで難しい場合もあると思いますが、お子さんの気持ちを理解したり認めたりする努力はしていきたい。筆者も二児の母親として、そう心に刻んでいます。

お子さんの将来のために…

ご紹介した暗記方法を、いろいろ試してみてほしいと思います。また、ご紹介した方法以外でも、お子さんに合った方法があるかもしれません。

暗記した知識を将来役立てるためには、「考える力」も必要です。知識をどう使えば生かせるのか、どう使えば感謝されるのか…。

社会に出てからは、問題解決能力やコミュニケーション能力も大切。暗記力を高めると同時に、お子さんの将来のため、思考力を高める意識も持てるとよいと思います。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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