一年生の教室でみる落ち着きがない子。原因と家庭での対策


授業参観や家庭訪問で、子供の落ち着きがないこと指摘されていませんか?

小学校に入りたての子は、誰もが落ち着きがないものですが、次第に慣れて落ち着いていきます。

しかし、数か月以上経っても学校に慣れずに落ち着きがない状態の「小1プロブレム」を引き起こす子もいます。

「小1プロブレム」は、教室での立ち歩きや、指示が通らないなどの問題行動が多く、授業が成り立たなくなる要因となります。

この問題を引き起こす子が多いと、先生の力だけではなかなか改善していくことが難しくなります。

ここでは、「小1プロブレム」を引き起こす主な原因を2つ挙げ、家庭でできる対策について詳しくご紹介していきます。

一年生の教室に落ち着きがない!「小1プロブレム」って何?

「小1プロブレム」という言葉をご存じでしょうか。

「小1問題」とも呼ばれ、小学校一年生のクラスで、入学してからずっと落ち着かない状態が続き、以下の状態が数か月以上続くことを言います。

  • 先生の話を聞かない
  • 先生の指示に従えない
  • 勝手に教室内を立ち歩く
  • 勝手に教室から出ていく
  • 授業中に他の子に話しかけたりちょっかいを出したりする

小学校という慣れない環境で戸惑う子はたくさんいますが、1週間~1ヶ月も経てばだいぶ慣れてきます。

ところが、ここでいう「小1プロブレム」では、先生の努力や時間で解決することが難しく、こうした状態の子が何人もいれば、注意や指導に時間が取られ、授業が出来なくなってしまうケースもあります。

「小1プロブレム」を起こしている子供は、授業参観でも確認することができます。

こうした子の対応として、学校では支援員を配置したり、特別支援の先生を配置したりしています。

授業をスムーズに聞ける子に対しては、先生は集中して指導ができますし、そうでない子には別の人員が個別に支援することができます。

とはいえ、一クラスに何人も授業を聞けない子がいては、支援する人を増員したところで手が回りません。

参観日に、子供の落ち着かない状態が目立ったら、原因を知り、対策を練っていきましょう。

なぜ起こる?「小1プロブレム」を引き起こす主な原因2つ

小1プロブレムが起こる原因として、主に2つのことが挙げられます。

  • 原因1 園と学校の違いになじめない
  • 原因2 大人(親、祖父母、地域の人すべて)との関わりが少ない

それぞれの原因について、詳しくみていきましょう。

原因1 園と学校の違いになじめない

新一年生は、だれもが園と学校との違いに戸惑います。この違いに対応できる子もいれば、対応できない子もいます。

対応できない子の中で、不安を表現しているのが、「小1プロブレム」を起こしている子です。

例えば、園では「活動」の時間が多いのに対し、学校ではじっと座って「聞く」という時間が多くなります。

ずっと固い椅子に座っておしりが痛いのを我慢しながら「聞く」のは、慣れていない子にとって、とても大変なことです。

さらに、授業の内容がわかっていなければ、他の子にちょっかいを出してしまうこともありますし、授業を受けるルールを知らずに立ちあるいてしまうこともあります。

全身で素直に表現できる子は、なじめない自分をそのまま表現してしまうのです。

保育園では、年長さんになると学校で授業をうけていられるように、お昼寝の時間を減らしたり、無くしたりするところがあります。

こうして、無理なく学校生活になじめるように工夫しているのですね。

ほかにも、少しずつ座って「聞く」時間を増やすなど、子供が混乱しないように上手にステップアップしていければ、対応しやすくなると考えられます。

原因2 大人との関わりが少ない

2つめの原因として、「大人との関わりが少ない」ことが挙げられます。

ここで言う「大人」とは、親や祖父母、地域の人たちすべての人をさしています。

「小1プロブレム」を引き起こす原因として、「家庭でのしつけ」が問題なのではないかという声もありますが、子供は家庭内での教育だけで育つものではありません。

親をふくめ、色々な大人と関わる中で、善悪の区別を教わったり、集団でのルールやマナーを教わったりするのです。

さらに、子供が大人と関わるなかで生まれるのが「安心感」です。

子供だけの場所では、自分たちでどうにかしなくてはいけない「不安感」がありますが、大人が一緒にいる場所では、頼れる「安心感」がそこにあります。

少々イタズラやケガをしても、注意したり見守ったりしてくれる人が側にいることで、子供は安心して思いっきり遊ぶことができます。

東京学芸大学の「小1プロブレム」研究推進プロジェクトが行なった研究のなかでは、[地域のさまざまな大人から見守られて育った子供は、大人の言うことに耳を傾けられる体勢ができており、「小1プロブレム」が生じない]といっています。

現代では、核家族化が進み、子供が親以外の大人と関わる時間が大幅に減っています。

よく「子育てはひとりではできない」と言われていますが、さまざまな大人と関わることで、子供が得られる安心感を与えるには、地域の人との関わりが大切なのです。

落ち着いて授業を受けるためにやっておきたい!家庭での対策

原因が分かったところで、家庭でできる対策について考えていきましょう。

それぞれの原因に合わせて、対策は変わります。

原因1(園と学校との違いになじめない子)への対策

生活スタイルの変化になかなか対応できない子には、徐々に学校のスタイルに慣れさせていくことが大切です。

家庭でできることは、以下のことが挙げられます。

  • 座って集中する時間を作る
  • 時間をみながら規則正しく行動する
  • 会話のキャッチボールの仕方を教える

それぞれの項目についてみていきましょう。

【対策1 座って集中する時間を作る】
授業中は座学がほとんどなので、先生の話を聞きながら集中して過ごすことができなければ、落ち着きのなさにつながります。

一年生の授業は一コマ45分で、国語と算数の時間は座学となることが多いです。

じっとしていることが苦手な子にとっては、いきなり長いこと座らされるのは大変なことですね。

もし、お尻が痛くなって姿勢が崩れてしまう子には、座布団を用意してみてください。

そして、家庭でも座って集中する時間を作って練習しておきましょう。

座って集中する時間は、勉強だけではなく、パズルやお絵かきなどでもOKです。

時間を決めて、「針が6のところまで、一緒に座って遊ぼう」などと、誘ってみると良いでしょう。

座っている時間は、子供が頑張れるぎりぎりの時間に設定しておきます。

「今日は20分座れたね、つぎは30分に伸ばしてみよう!」など、徐々に時間を延ばしていくようにします。

座らせて作業をするときは、いつも同じパズルや、いつも同じ作業にならないように気をつけましょう。

子供が集中できる興味のあることを用意して行なうのがコツです。

もし、あまり家庭で時間がとれない場合は、座りながらできる習い事をさせてみるのも、一つの手です。

書道やそろばん、絵画教室などに興味がある子には、「技術」と「座って集中する力」の2つを楽しんで身につけられるはずです。

【対策2 時間をみながら規則正しく行動する】
学校での生活は、時間で区切られています。

始業のチャイム、終業のチャイムなど、生活の区切りを時間で分けて、行動を切り替えています。

これに慣れていない一年生は、「授業中でも勝手に飛び出す」、「休み時間が終わっても戻ってこない」といったことが起こります。

家庭の中では、「ごはんの時間には席について食べる」、「○時にはお風呂に入る」など、時間を気にしながら規則的に生活できるように声かけをしていくと良いでしょう。

【対策3 会話のキャッチボールの仕方を教える】
会話のキャッチボールの仕方が身についていないと、授業中の先生の話を遮って話を始めたり、相手の話を聞かずに一方的に話し続けたりしてしまいます。

授業中に他の子に話しかけたりすると、話しかけられた子は授業に集中できません。

「だれかとお話するときは、ルールがあるよ」ということを伝え、以下の会話のルールを教えておくようにしましょう。

《一年生に教えたい会話のルール》
●授業中はお話しない
●誰かの話が終わってから話し始める(話を遮らない)
●自分が話したら、聞いてくれた子の話を聞く(一方的に話さない)

こうしたルールを口で教えても、改善するには時間がかかります。失敗や、注意されることを繰り返しながら、少しずつ落ち着いてきます。

話をしたがる子は、誰かに聞いてもらいたい気持ちが強いので、普段の生活で会話のルールを気に掛けながら、子供の話に積極的に耳を傾けると良いでしょう。

話を聞いてくれることで、満足感と安心感が生まれ、不安定な心が落ち着きます。

原因2(大人との関わりが少ない子)への対策

大人との関わりが少ない子には、さまざまな場面で地域の人と交流できる機会を持つことが大切です。

そのために、以下のことが対策として挙げられます。

  • 地域の集まりに参加する
  • 遊びの時間は「ひとり」より「みんな」で過ごす

それぞれの項目を詳しくみていきましょう。

【対策1 地域の集まりに参加する】
地域の運動会やイベントなど、継続して参加することで知り合いが増え、話ができる大人が増えます。

子供の成長を見守る大人が増え、さまざまな人とコミュニケーションがとれるようになり、パパやママにも子育ての安心感が生まれます。

キャンプやアウトドアなどで、色々な人と出会うのもお勧めです。

【対策2 遊びの時間は「ひとり」より「みんな」で過ごす】
現代ではテレビやゲームなど、人と関わらなくても子供がひとりで遊べる環境があります。

しかし、これを子供が大きくなるまで繰り返していては、色々な人と出会う機会が失われてしまいます。

手本となる大人との出会いや、人との関わりを通して学ぶ「思いやり」や「協調性」は、「ひとり」より「みんな」と過ごして育てていきます。

たくさんの人と関わって育った子は、人に対して関心を持ちやすく、「小1プロブレム」を起こしにくくなります。

忙しくてなかなか子供の相手ができないときは、休日だけでも人が集まる場所に行ってみると良いかもしれません。

人と関わる体験を通して「小1プロブレム」を乗り越えよう

ここまで、一年生が落ち着かない背景として「小1プロブレム」を取り上げ、原因や対策についてご紹介してきました。

もう一度、おさらいしてみましょう。

【「小1プロブレム」の原因】

  • 原因1 園と学校の違いになじめない
  • 原因2 大人との関わりが少ない=安心感を得られる機会が少ない

【「小1プロブレム」の対策】
原因1(園と学校との違いになじめない)の場合

  • 対策1 座って集中する時間を作る
  • 対策2 時間をみながら規則正しく行動する
  • 対策3 会話のキャッチボールの仕方を教える

原因2(大人との関わりが少ない)の場合

  • 対策1 地域の集まりに参加する
  • 対策2 遊びの時間は「ひとり」より「みんな」で過ごす

自治体の中には、園と小学校での連携を強化し、入学前にパンフレットを配るなどして「小1プロブレム」に取り組んでいる所もあります。

家庭でできる対策をしながら、お住まいの地域の活動をチェックし、活用していくとよいでしょう。

落ち着きのない子の中には、多動などの発達障害がある可能性があります。

その場合は、別の対処法が必要です。

早期の発見が適切な治療を受けるきっかけになるので、気になる場合は専門機関で相談してみるとよいでしょう。

小1プロブレムの原因である2つの事柄のうち、1つ目(園と学校との違いになじめない)では、家庭でも対応がしやすいことです。

しかし、2つ目(大人との関わりが少ない)では、親や周囲の大人の働きかけが必要です。

色々な人と関わり合いながら、子供の力を育て、「小1プロブレム」を乗り越えていきましょう。

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