子供が鏡文字を書く理由とその矯正方法。特に左利きは起こりやすい!


幼稚園や小学校のはじめ、お子さんの文字の書き始めの時期によく現れる「鏡文字」。

いくつか並んだ単語の中に「さ」が「ち」、「く」が「>」のようにと、時々くるっと左右反転した文字が混ざっていることはありませんか?それを見てはじめは微笑ましく感じる方も多いでしょう。

ですが、しばらく正しい文字がなかなか身につかなかったり、稀なケースではありますが、すべての文字を反転させた文字を書いたりと「うちの子は大丈夫かしら・・・」と不安になる方もいらっしゃるかもしれません。

今回はそんな鏡文字の原因と、正しい文字に導いてあげるための対処方法についてご紹介していきたいと思います。

鏡文字とは?誰にでも起こりうるもの?

鏡文字とは鏡像文字とも呼ばれ、その名の通り左右が鏡写しのように反転した文字のことを指します。

これは左利きの場合や、文字を習いたての子供が自然にこのような文字を書くという現象が世界的に広く見られ、未だ詳しい原因についての解明には至っていないようで、諸説あります。

その多くは健康的な子供にも十分に起こりうる現象ですのでご安心下さい。

ですが、稀にすべての文字を反転させた文字列を書いたり、長期に渡ってトレーニングを積んでも正しい文字が身につかない場合があります。
こうした場合、後ほどご紹介する「ディスレクシア」(あるいは「ディスグラフィア」)という読み書きの障害が伴っている場合があり、それぞれに合った環境を整えてあげることが重要となってくる場合もあります。

なぜ鏡文字を書いてしまうの?原因とその理由

まずは健全な子供にも起こる鏡文字について探っていきましょう。

冒頭でも書いたとおり文字の習いはじめに「さ」が「ち」、「く」が「>」など、いくつか文字を連ねた際に反転した文字が混ざることがあります。

大人の皆さんでも記憶をたどってみると「はじめはそんなこともあったな・・・」と心当たりのある方も多いのではないでしょうか?

これは日本だけに限らず英語圏なども同様で、「b」を「d」、「R」を「Я」などアルファベットを反転させる子供達も多いようです。

上記「R」の鏡文字、この「Я」は実際にはロシア語の「ヤー」という記号なのだそうですが、あの「ToysЯus」もロゴにこの文字を「R」の代わりとして使用しています。
これは「鏡文字を書いてしまいがちな子供達に親しみを持ってもらうため」という意味が込められているそうです。

日本ですと三菱が「RVR」を「ЯVR」とし、あえて鏡文字で全体を左右対称のデザインにする少々ユニークな使い方をみせています。

また、アルベルト・アインシュタインは生涯なぜかこの「R」だけを「Я」と表記し続けたなど、独特なこだわりがあったようです。

これら鏡文字の症状はまだ研究も浅く完全な解明には至っていないものの、「なるほどな」と思うような大まかな説についていくつかご紹介したいと思います。

左利きだから

先程もご紹介したとおり、左利きの子供はとくにこの鏡文字を多く書いてしまうようです。
単純に私達右利きの動作を反転させた「書きやすさ」もあるでしょう。

実際左利きの子供の場合はその多くの日常動作を、自然と右利きの動作を反転させているのですから不思議ではないのかもしれませんね。

どちらにせよ、左利きの子供は右利きの子供に比べ日常生活で少なからずハンディキャップを抱えることになります。

正しい文字が身につくまで、とくに右利きの子に比べてじっくり見守ってあげることが大切です。

左右の判別が曖昧だから

右利きの子供でも「利き手」についての感覚がまだ浅いので、そもそも手を動かして文字を書くという微細な動きに不慣れで「自分の思う書きやすい方向に文字を書いた結果、鏡文字になってしまう。」ということも多いでしょう。

また、左右の判別がまだしっかりと身についておらず「右か左か悩んだ結果、左右を間違えて鏡文字になってしまう。」というケースはとくに多いことかと思います。

例えば「ま」という文字は出だしは好調でも最後のまるめの方向が誤れば見事な鏡文字です。

文字トレーニングと並行し、左右の違いをじっくりと認識させていくことが大切です。

脳の機能的結合が弱いから

「こちらは子供は左脳の発達が弱いから。」という文章表現が気になり、今回の執筆にあたって色々と調べてみました。

「人間の脳は領域により、様々な役目を持っている」というのは有名ですね。
少し前に「右脳派」「左脳派」などといった言葉も流行りました。

しかし、「確かに脳の機能が左右で離れているというのは事実で、言語は大抵左脳、注意は右脳で処理されることが多いが、脳のネットワークを通し、どちらか半球のみに偏った使用は見られない。」というのが最近の研究結果に上がっています。

つまり、1つの物事を処理するのに、実際は右脳だけあるいは左脳だけ。という脳の使い方はせず、情報を行き来させているようです。
ですが、「子供のうちはこの脳領域同士のネットワーク結合が大人に比べて弱い。」という結果が出ています。

これが文字を認知し、実際に書く(表現する)までにどこかで情報が誤って反転されてしまうのではないか?というのが今回調べていく上で私が感じた結論です。

後ほどご紹介するディスレクシア(ディスグラフィア)も、「知的上に大きな問題はないものの、文字を読み書きする上での脳処理の段階でどこかに躓きが出る。」という紹介がなされていました。

実際にこのほとんどは時間と共に自然と改善されますし、ディスレクシアの場合にもそれぞれ正しいトレーニングを積むことで改善が見られるケースも多いようです。

脳科学的にもこの鏡文字は不思議な現象の一つなのではないでしょうか。
今後の研究に期待が高まりますね。

鏡文字から正しい文字に導くための対処法

一番はじめの学習である文字に対しての苦手意識は、今後の学習にも広い意味で影響が及ぼされることとなります。
そうした意味でも、正しい文字を身につける上で大人のサポートは重要となってきます。

まずはぜひ、誤った字を書いても厳しく叱らないであげてください。
一緒に工夫してあげることで、文字の楽しさを身につけてあげましょう。

正しい文字がなぜ重要か理解させる

これが理解できている子とそうでない子では後に「文字を綺麗に書くこと」などにも差がでてきます。

実は上下反転の文字には違和感を感じても、鏡文字に対してはあまり違和感を感じない子供も多いという研究結果もあります。
これはおそらく私達大人のように記号に対しての固定概念も浅いからでしょう。

面白いことに古代の文字は文字列や改行方向にあわせて逐一左右反転させていたという歴史もあるそうです。
ですが、現代は文字への一律固定された意識がありますので、このようにいきなり鏡文字を使われては社会生活上にも混乱が生じてしまいます。

手記の全てを鏡文字で筆記したレオナルド・ダ・ヴィンチは、一説では他人に読まれないように鏡文字を利用したという説もありますが、このように文字は自分だけが読めればいいというものでもありません。

ある程度文字への学習が進んでいる子にはとくに、文字は人に読ませるための重要な伝達手段であること、あるいは自分があとで読み返したときに読みやすいものでなければならないということを理解させましょう。

また、子供はルールや規則性に敏感です。

一文字ごとの文字のバランスの規則性や、文字を並べたときの文字同士の間隔の練習など、出来るだけそれぞれに意味を持たせて「綺麗な文字・正しい文字」という概念にしっかりと導いてあげましょう。

また、書き順というルールは綺麗な文字を書くためだけでなく、後に素早く文字を筆記する上での「くずし字」といった応用にも重要となってきます。

文字を書く上でも、こうした「なぜそうなるのか?」という子供ならではの素朴な疑問を一緒に解決していくことが大切です。

なぞり書きをさせる

いきなり白紙に文字を書かせるというのは子供にはなかなか難易度が高く、混乱も多いでしょう。

まずはなぞり書きで正しい文字全体を捉えさせることが大切です。
とくに先程のルールや規則性の整ったガイドライン付きのものを選ぶと後に一人での学習もはかどることかと思います。

白紙の場合、お手本となるものをそばに置き、後ろから手を添えてあげながら一緒に書き順やバランスのおさらいをしてあげるのもよいでしょう。

声に出して覚えさせる

例えば「ま」は「よこ、よこ、たてで、そのまま左から右にくるりんぱ!」など、書きながら声を出させ、リズムよく書かせるようにしましょう。

音でも形を認識することで、迷ったときの助けになります。

「ち」は「鉛筆をもつ、右手にカーブ」など、左右判別のガイドをつけてあげることで鏡文字の予防となるでしょう。

慣れるまで一緒に声に出しながらそれぞれの記号のイメージをつかみやすくしてあげることが大切です。

約10人に1人?多くの著名人も悩んだディスレクシア

稀に小学校高学年や大人になってからも、知的発達に問題はないものの鏡文字を書き続けたり、文字の読み書きに対しての不適応がある場合もあります。

日本ではまだまだ認知や研究が浅いものの、こうした症状に学習障害の一種として前述からご紹介のとおり「ディスレクシア」という障害が存在します。

読みの障害を「ディスレクシア」、書きの障害を「ディスグラフィア」など細かい分類もあるようですが、日本だとこれを総称し「発達性読み書き障害」と呼ぶこともあるそうです。

これは全世界すべて共通で確認されており、地域ごとのデータにばらつきはありますが、大体人口の3-10%もの人がこの障害を抱えているといわれています。

これは30人のクラスに1人、多くて3人はいるという計算ですので決して少ない数字ではありません。

実はこの中でも日常生活に支障をきたすレベルは20%ほどといわれており、大抵は大人になっても障害に気付かないまま成長する方が多いというのです。

実際文字という概念は人間が後天的に学習して身につけたもので、そもそもそれを処理する領域が未発達だということもあるでしょう。

  • 視力に異常はないのに、文字がかすんだり滲む
  • 文字の並びがゆがんで見える
  • 似ている文字や記号の判別がつかない
  • そもそも文字が反転して見える
  • 文字の形はわかり読めるが、いざ書くと正しく書けない
  • ・・・etc

前述にご紹介したアルベルト・アインシュタインやレオナルド・ダ・ヴィンチ、あのトーマス・エジソンなどもディスレクシアであったのではないかとされています。

現代では実際にトム・クルーズやスティーブン・スピルバーグなどもこの障害を告白しており、認知度が高まりました。

こうした天才達も果敢に文字の壁を乗り越えてきたのだと思うと、なんだか心強いですね。
もしかするとお子さんも天才の卵かもしれません。

また、今回のテーマである大人になってからも鏡文字を使用した人物として先程のレオナルド・ダ・ヴィンチは有名ですね。
ですが彼の筆記の中で稀に通常の文字の筆記が発見されています。

また、実はルイス・キャロルも利き手の矯正をした元左利きで、普段は右手で通常の文字を筆記していましたが、多数の鏡文字による筆記ものこされていたようです。

これはトレーニングと本人の症状次第では鏡文字と正しい文字を使い分けることも可能であるということです。

先程もご紹介したとおり、正しい対処をしてあげることで十分に改善が見込めるケースも多いようです。

しかし、それぞれ症状が異なり、それによって正しい対処方法も異なります。
鏡文字が長期化する場合にはこのような症状を視野にいれて、専門家に相談することも大切です。

あせらずじっくり、一文字ずつ。

いかがでしたでしょうか。

最近は脳の活性化のために大人でも鏡文字を練習する方もいらっしゃるようです。
私達大人も影でこっそり練習し、子供の気持ちを味わってみませんか?

のちに正しい文字、あるいは反転した鏡文字を用意してその見本を反転させて書いてみたり、なにが書いてあるか当てるなど、独自のゲームで競い合ってみるのも楽しいかもしれませんね。

ちょっとくらいの失敗は心配ご無用!
ぜひじっくり今後のお子さんの文字学習を見守り、支えてあげてください。

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