小学校の担任にクレームを言う時に、失敗しないための4つのこと


「えっ…そんな指導や対応?」「子どもに対してその言い方って…?」小学校の担任の先生に対して不満がある親御さん。内容はそれぞれだと思います。

「学校にクレームを言いたい!」…感情的な人も冷静な人も、苦情を言う前に把握してほしいことがあります。

せっかく事を起こすなら、お子さんにとって良い方に向かってほしいですよね。失敗するとお子さんの心が傷ついたり、モンペ扱いされたりする可能性も…。

ここでは、小学校での勤務経験があり二児の母親でもある筆者が、クレームを言う際に注意したいこと、上手に話を進める方法などをまとめていきます。

①クレームの内容をメモして整理しよう

第一段階として、今の問題点や自分の気持ちを整理しましょう。自分が冷静になれるだけでなく、苦情がダラダラ長くなることを防ぐ目的もあるのです。

またスマホ・携帯にではなく、紙にまとめておくことをお勧めします。メモを見ながら話す場合でも、感じが悪くなりにくいからです。

問題点はいくつありますか?

まず、現在の問題点を箇条書きにします。たとえば以下のような感じです。

【1】子どもたちが騒がしく、授業の進みが遅いと思われる件
【2】低学年では禁止されているファスナー式筆箱の件

現時点での「事実」をまとめる

次に、問題点とそれを知った経緯、事実なのかそうでないのかを分けていきます。ここでは「主観」を入れず、「客観的」に書いていきます。

【1】子どもたちが騒がしく、授業の進みが遅いと思われる件
・自分の子どもが「みんなが騒がしくて授業が聞こえない」と言っている。
・〇〇くんと△△さんのお母さんも同じことを言っている。
事実かは明確でない(多少騒がしいのだろうが、どの程度かわからない)
・自分の子どもが「他のクラスより授業が遅れている」と言っている。
・他のクラスの保護者に聞いた結果、国語と算数が現時点で大幅に遅れている。
おそらく事実

【2】低学年では禁止されているファスナー式筆箱の件
・授業参観で見たら、半分ぐらいの子がファスナー式筆箱を持参していた。
事実
・自分の子どもが「先生は全く注意しない」と言っている。
事実かはわからない(たまたま子どもが見ていないだけかもしれない)

自分の「感情・気持ち」をまとめる

次に、このことに対して「親としてどう思うのか」をまとめます。「私は正しく、先生が悪い!」というスタンスではなく、「私はこう感じる」という純粋な気持ちです。

【1】子どもたちが騒がしく、授業の進みが遅いと思われる件
・騒がしいのが事実だとすれば、授業の内容が身に着くか心配である。
・大幅に遅れている教科の内容が、学年末までに終わるのか不安である。

【2】低学年では禁止されているファスナー式筆箱の件
・学校で禁止されている物を、クラスの半数近い子が持参していてショック。
・自分の子どもも欲しがっているが、学校で禁止されている物なので迷う。

今後の希望・要望をまとめる

最後に、学校側にお願いしたいことをまとめます。

【1】子どもたちが騒がしく、授業の進みが遅いと思われる件
・騒がしい子に注意するなどして、授業に集中できる環境をつくってほしい。
・学年で学ぶべき内容は、この学年のうちにきちんと指導してほしい。

【2】低学年では禁止されているファスナー式筆箱の件
・持参してもよいのであれば、学校のルール自体を見直して変えてほしい。
・「禁止」なのであれば、持参している子に直接、もしくは学級通信などで注意してやめさせてほしい。

内容にもよりますが、「学校に丸投げ」の気持ちではなく、「協力する」「家庭でも注意する」などの姿勢も大切です。

②メモした内容、本当に言う必要あり?

クレームの内容を紙に書きました。少しすっきりした親御さんもいらっしゃるかもしれません。

メモを見直したり、子どもの今後のことを冷静に考えたりしてみましょう。これはクレームを言うほどの内容か否か、再度検討します。

「事実」がはっきりしていない場合

まず事実かどうかが明確でなかった場合、「クレームを言う」という意識は捨てましょう。「事実やその時の状況を先生に聞く」ことから始めるのです。

子どもの話を信用する気持ちは大切ですが、ありのままを話しているかはわかりません。子どもにもよりますが、まだ説明する力が不十分ということもあり得ます。

担任の先生に様子を聞くことで、見えなかったことが見えてきたり、先生のお考えや指導観がわかったりする場合も多いです。

クレームを言うまでの内容か?

クレームを言うこと自体は、決して悪いことではありません。多くは子どものよりよい成長や健やかな学びを確保するためでしょうし、学校側が気づいていないことの可能性もあるからです。

ただ、最近は理不尽なクレームが増えているのも事実です。

  • 明らかに自分の子どもが悪いのに、注意した先生に文句
  • 自分の子どもの作品などが選ばれないことへの不満
  • 自分の子どもが何かできなかった時に、すべて先生の指導力のせいにする

ママ友同士、親同士で話すだけならまだしも、実際にクレームとして言ってしまう。すると職員室内で「注意を要する親」として情報共有される可能性もあります。

クレームを言うだけでなく、要求が通らないからと悪意ある噂を流す保護者も…。疲弊したり精神を病んだりする先生が増えているのも、うなずけます。

ただ筆者も「保護者」になり、長女の幼稚園時代、危うく感情的に苦情を言いそうになったことがありました。普段は常識的に見えるお母さんが、理不尽なクレームを言ったという話も聞きます。

もう一度、自分が言おうとしているクレームは、筋が通っているか、道徳的に問題がないかを確認しましょう。自分が後悔しないためにも…。

自分で判断できない場合、ご家族や友人知人などの意見を聞いてみるのもよいと思います。区や市町村の教育相談体制について調べ、その機関に話して意見をいただくのも一つです。

親のフォローだけで済む場合も!

クレームの内容を整理した結果…。「先生の指導方法や雰囲気などが、自分の子どもと合わないだけだった」ということはないでしょうか?

特に「先生側に問題がある」わけでも、クラス内で「トラブルが起こっている」わけでもない…。

先生方は、それぞれ教育方針やお考えをお持ちです。厳しい指導に偏りがちな先生もいれば、反対の先生もいます。その時のクラスの雰囲気によって変える場合もあるでしょう。

明らかな暴言はよくないですが、言葉遣いが少々雑な先生もいれば丁寧な先生もいます。雰囲気やカラーもそれぞれですよね。

単に自分の子どもと先生の「相性がよくない」「合わない」。これはよくあることです。子どもにとって、いろいろな人とかかわるのも勉強。親は子どものガス抜きをしてあげるなど、適切にかかわるだけでよいのかもしれません。

以下の記事が参考になると思いますので、ぜひお読みいただければと思います。
小学校の担任が「合わない」と思う時。親はどうするべき?

③誰にどうやって言うのかを考える

再検討しても「子どものためにクレームを言う必要がある!」と判断した場合。誰にどうやってクレームを言えばよいのでしょうか?

まずは担任の先生に直接がよい

実はありがちなのが、教頭先生や校長先生にまず言ってしまうこと。腰が低く話しやすい、保護者に感じがよい場合だとなおさらです。

しかし、まずは担任の先生に言う方がよいでしょう。担任の先生も人間。先に上司にあたる校長・教頭先生に言ってしまうと、

  • 「自分は信頼されていないのだな…」
  • 「自分に直接言ってくれれば解決したのに…」
  • 「自分へのクレームが他の先生にも知れ渡ってしまった」

などと、寂しさやおもしろくない気持ちを抱くかもしれません。通常3月までは、子どもと担任の先生は教室内で顔を合わせます。

親御さんだけが「スッキリしたい!」「あの担任、気に入らないから悪評を」…そんなクレームを言う人もいますが、絶対にやめましょう。子どもの成長や学びを一番に考え、子どものためにも「先生との関係を悪くしないやり方」が得策です。

担任の先生以外に言いたい場合

以下のような場合もあるでしょう。

  • 担任の先生に言ったが「対応してくれない」「解決しない」
  • 今までの対応や指導などを見ても「全く頼りにならない」
  • 担任自体に体罰や暴言、性的嫌がらせなどの問題の疑いがある

先生の対応力、問題解決能力。先生も人間ですから多少の得意不得意はあるでしょう。しかし「面倒だから」と対応しないのは論外だとしても、能力的に低すぎる教員がいることも確かです。

また、中には問題がある教員もいるかもしれません。大多数の先生は該当しないと思うのですが、体罰、暴言、特定の児童へのいじめ、性的嫌がらせなど…。こんな場合は誰に言えばよいのでしょう?

(学年主任がいれば)学年主任→管理職(校長・教頭)→教育委員会

の順番が望ましいと思います。1学年1クラスでない限り主任がいるはずですので、まずは学年主任がよいでしょう。

多くの学校は保護者から問題を指摘されれば、「良くも悪くも」すぐに対応します。担任としては「上司」から指導されるわけで、それで改善すれば解決です。

「良くも悪くも」というのは、「校長先生に少し注意して見ていただきたいだけです。担任の先生に私が告げ口したと知られたくないので」とかお願いしても、まず難しいということです。

もちろん内容や状況にもよりますが、学校側は聞いてしまった以上必ず「対応」します。責任ある立場の先生はなおさらです。何も対応せずに問題が起きてしまったら、それこそ取り返しがつかないからです。

学年主任で解決しなければ校長か教頭、それでも難しければ教育委員会、という「近い順」がよいでしょう。最初から教育委員会にクレームを言う人もいますが、今後もその小学校に子どもを通わせる以上、おすすめはできません。

筆者は勤務時に失敗した経験があります。「近い順」を守らないと、後々自分やお子さんが損をすることになりかねません。

複数で言った方が効力あり

担任の先生に明らかな体罰や暴言、嫌がらせなどの疑いがある場合、可能であれば複数の保護者で立ち向かった方がよいでしょう。

何か意見を言う時は、複数の方が効力あり。相手が学校に限らず、ですよね。PTA役員の経験などで学校側と信頼関係があれば別ですが、一人で言うと「被害妄想」「自意識過剰」などと思われる可能性もゼロではありません。

一人で言う場合も複数で言う場合も、できるだけ疑いの行動を集めます。

  • 先生が問題と思われる行動をした「月日」
  • 「時間帯」もしくは「どの授業・活動の時だったか」
  • 具体的な「内容」(証拠があれば証拠)

などを多く準備できた方が、ある程度強く出られます。

自分の子どもだけでなく、クラスメートや保護者からの声は、あればあっただけ効力が増します。

ただ、「必要以上に学校にかかわりたくない」「我が子に悪影響が及んだら嫌だ」と、何か知っていても協力しない保護者もいるでしょう。

日頃からの保護者同士のつき合いや、ある程度印象をよくしておくことも大事なのかな、と感じます。

手段はどうする?

クレームを言う手段は、主に次のいずれかになると思います。

  • 連絡帳
  • 電話
  • 直接小学校へ出向く

それぞれに特徴や、メリット・デメリットがあります。

連絡帳は、ご存知の通り文章を書いて伝えます。考えながら時間をかけて作成できますし、非常に怒っていても丁重・謙虚な文章をつくることも可能です。

ただ、子どもが見てしまう可能性があります。できれば手紙を書いて封筒に入れ、クリップで挟む方法がよいと思います。

電話で話したい場合や直接小学校へ出向きたい場合も、「突然」はやめましょう。連絡帳に一言その旨と、「ご都合のよい時間帯を教えていただければと思います」と書けるとよいですね。

④後悔しない!会話と振る舞いのコツ

まず事実や様子を聞く場合も、実際にクレームを言う場合も。担任に言う場合も、学年主任や管理職の先生に言う場合も。どんなに腹立たしい内容でも…。

失敗や後悔する結果にはしたくありませんよね。自分に有利な展開に持っていく!その会話のコツや心がけの方法をお伝えします。学校相手だけでなく、誰とでの関係でも使えますよ。

普段からの礼儀や挨拶も重要

今さら…かもしれませんが、普段からの印象をよくしておくことが、成功への一つの鍵となります。

  • 先生方(特に担任の先生)に会ったら挨拶をする
  • 学校内での服装や態度に気をつける
  • 感謝の気持ちを表す習慣をつける

「自分が先生だったら…」と考えてみてください。同じ内容だとしても、クレームを言う保護者が

  • 普段からニコニコしていて礼儀正しくマナーも守っている保護者
  • 普段から暗い表情が多く、会っても挨拶もしない保護者
  • いつもガムをクチャクチャ噛んでいる、高飛車など、態度が悪い保護者

では、だいぶ印象が違うと思いませんか?もちろん内容にもよりますが、普段から先生方と良好な関係を築いておくと、何かあった時に角が立たずに相談できる、と言えるでしょう。

どんな展開になっても感情的はNG

内容によっては「怒りたい!」「泣きわめきたい!」場面もあるかもしれません。しかし、あまりにも感情を出してしまうのはよくないでしょう。

仮に「ハズレ教員」へのクレームだとしても、保護者の感情的な部分が目立ち、結果的に損します。学校側に「あの教員もあの教員だが、保護者も保護者だな」と思われる可能性が高いのです。

ただ、悩み過ぎて病んでしまっている親御さんもいるかもしれませんね。正当なクレームのはずが、「あの親は病んでいるし…」という評価になったら無念ではないでしょうか?

  • 深呼吸の習慣をつけ、なるべく自分の精神状態を整えた上で話しに行く
  • 話すべき内容をメモして持参したり、会話の展開を想像したりしておく
  • 旦那さんやご両親など、誰かと一緒に行く

感情のコントロールが難しい精神状態の場合、最初は連絡帳がおすすめです。しかしやりとりが続くにつれ、電話や直接の話し合いの可能性が高くなります。

なるべく自分の体調を整え、慌てないような準備を、可能な限りしておきましょう。信頼できる人と一緒に行くと、自分が取り乱しそうになった時にフォローしてもらえます。

先生のプライドを傷つけない

小馬鹿にされたり見下されたりして、いい気分になる人はいませんよね。

  • 「民間企業では、そんな対応、許されませんよ!」
  • 「お若いからご経験がないのかもしれませんけど」
  • 「あなたみたいな人が、よく教師になれましたね」

人は嫌な気分になると、たとえ正当なクレームや相談だとしても、聞く耳を持ちたくなくなります。皆さんもそうではないでしょうか?

ただでさえ、学校の先生はプライドが高い方が多い印象です。言葉はもちろん、態度でも傷つけないよう注意を払いましょう。それは自分や子どもにとっての得策でもあるのです。

共感の姿勢を見せる

会話上手な人は、「共感」する言葉をうまく使っています。相手が「私の気持ちを分かってくれている!」と思い、よい気分で話せるからです。

クレームを言う際に利用するとすれば…。「そうですね、先生のおっしゃることもわかります」「そのようなお考えもありますよね」という言葉や態度です。

反対意見を言いたい場合、この共感の姿勢の後で「ただ、〇〇だから△△ということも考えられないでしょうか…」などと続けます。

これは心理学でいう「イエスバット法」で、ビジネスの世界でも使われているもの。ただ「反対意見を言う」ことに変わりはなく、相手を不快にさせることもあります。

少しでも印象をよくするためには…?この後に「親としては心配です」と気持ちを伝えたり、「もし再び同じようなことが起きたら、どう対処すればよろしいでしょうか?」のように疑問形で返したりできるとよいと思います。

たとえ演技でも、冷静に感じのよい態度で。内面の怒りなどが顔や声からにじみ出てしまっては、後々損をしかねません。

自分も努力する姿勢と謙虚な気持ち

先述しましたが、「学校に丸投げ」の姿勢はよくありません。保護者と学校は共に子どもの成長を願う「仲間」であり、協力し合うことが大事だと思います。

学校に相談・お願いをしつつ、「家庭でも子どもに働きかける」「親自身も努力する」という姿勢を見せるとよいでしょう。印象が悪くなりにくいだけでなく、子どもの成長や状況改善のために必要な場合も多いですよね。

また内容にもよりますが、謙虚な気持ちを表した方が「良好な関係を築きつつの状況改善」につながりやすいです。クレームが通ったところで悪い印象を与えてしまっては、後々得策ではないでしょう。

  • 「私にも至らないところがあったのかもしれませんが」
  • 「こちらにも全く非がないとは言えないのですが」
  • 「子どもも悪い点があったとは思いますが」
一方的に責めるのではなく、「こちらも悪い点はなかったか」を省みる感じでしょうか?「冷静かつ客観的」というアピールにもなります。

最初と最後の挨拶を忘れずに

クレームを「成功」、すなわち「学校側との関係を悪くせずに状況改善につなげる」ためにも、最初と最後は肝心です。

連絡帳であれば、最初に「いつもお世話になっております」や「日頃より熱心なご指導をいただき、ありがとうございます」などと書く。最後には「お忙しい中恐縮ですが、お返事をいただけますと幸いです」などで締める。

電話や直接会って話す場合でも、最初に「お忙しい中すみません」「よろしくお願いいたします」などをさらっと言えると好印象です。

直接小学校へ出向く場合、親御さんも緊張して無表情・無言になりがちです。しかし第一印象の大切さは心理学でも言われており、人の第一印象は会って7秒~2分で決まってしまいます。

挨拶は礼儀の上でも必要だと思いますが、最初の印象をよくすることで、その後の会話も有利な展開に持っていきやすくなるのです。

また、何事も「最後も肝心」。話の内容や展開がどうであろうと、最後の挨拶もしっかりとしましょう。「お忙しい中お時間をつくっていただき、ありがとうございました」は、多くの場合で使えるフレーズです。

話の展開がどうあれ、「小学校教員は仕事量が多い」ことも「保護者対応に時間を割いた」ことも事実だからです。

明らかに先生側に問題があり、「どうしてこっちがペコペコしなきゃならないの!」という場合もあるでしょう。その場合でも、今後も小学校に通い続けるお子さんを思い浮かべ、けんか別れのような後味の悪さは避けたいものです。

しんどくても、すべては子どものために…

「小学校の担任にクレームを言いたい!」…でも衝動的、感情的に行動することだけは、避けてほしいと思います。

目を閉じてしばらく深呼吸し、本当に言うべきかを再考してもよいでしょう。

「モンペ扱いされるかも…」と尻込みする親御さんもいるかもしれません。しかし「このまま黙っていることが子どものためにならない」…その場合は勇気を出しましょう。

保護者と連携しながらよりよい教育を提供するのも、先生方の大事な仕事のはずです。

担任の先生や学校側との関係を悪くせずに、お子さんもしくはクラスの状況が改善することを、心から願っています。

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