読書感想文はどうやって書く?小学生が書くときに必要な書き方の例


「何を書いたら良いのかわからない…」

なかなか思うように感想文が書けないのは、「感想を書きたいと思える本に出会っていない」、もしくは「感想文の書き方がわかっていない」のかもしれません。

読書感想文では、一冊の本を読むことが大切です。

感想文のために仕方なく選んだ本では、面白みや感動が少なく、感想が湧きにくいことがあります。

ここでは、本選びのコツを取り上げ、「始め・なか・終わり」の3部構成を意識した感想文が書けるように書き方の例をご紹介します。

また、具体例として『注文の多い料理店』の感想文の書き方を構成から順にご紹介しています。

人に楽しいことを話しかけるように、感想を原稿用紙に書き綴っていきましょう。


読書感想文をスムーズに書きたい!本選びの3つのコツ

読書感想文を書くためには、本を読むことが前提です。

いったいどんな本を読んだら良いのか分からないときは、自分が興味を持って読めるテーマの本を探しましょう。

自分で探すのが難しい…という人は、図書館のスタッフさんや本をよく読んでいる友達におすすめの本を聞いてみると良いでしょう。

それでも、良い本が見つからない場合は、図書館や書店で実際に本を手にとって探してみましょう。

本選びのコツは以下の3つです。

  • 実際に手にとって読む
  • 文章が読みやすい
  • 最後まで読めそう

それぞれのコツを具体的にみていきましょう。

【実際に手にとって読む】
気になったタイトルや、興味を持ったテーマが表紙に書かれていても、中身が思ったモノと違っていては、読みたい気持ちが半減してしまいます。

ページを開くと、自分の考えていたものとは違うことについて書かれていることもあります。

そのため、実際に手にとって簡単に読んでみることが大切なのです。

【文章が読みやすい】
これも、実際にページを開いてみないと分かりません。

漢字があまり読めないのに、読み仮名をふっていない文章だったり、言い回しが難しい文章だったりすると、途中で投げ出してしまうかもしれません。

読みやすい文章で書かれた本を探しましょう。

【最後まで読めそう】
文章が読みやすいことに加えて、「最後まで読む」ことはとても重要です。

なぜなら、読書感想文は、その本をすべて読んだ感想を書くからです。

あまりに分厚い本を選んでしまうと、読むだけで時間がかかってしまい、言いたいことをまとめたり、書いたりする段階に影響します。

最後までスムーズに読めそうな本を探し、楽しみながら読んでいきましょう。

これらの本選びのコツに気をつけて、ピッタリの本を選んで下さいね。

それでは次に、構成を意識した書き方の例をご紹介します。

「はじめ・なか・おわり」が肝心!構成を意識した書き方の例

読書感想文を書くときに大切なのは、構成を考えて書くことです。

構成とは「文の組み立て」のことで、文章がより伝わりやすくなるように、順序よく伝える工夫です。

基本の構成は、「始め」、「なか」、「終わり」の3部構成になっています。

それぞれの中身は以下の通りです。

【始め】
最初の「書き出し」に当たる部分。自分が感動した部分に関連するあらすじを書いたり、本を読むきっかけとなった出来事を書いたりします。

【なか】
「始め」で書いたあらすじに対して、強く感動した部分や共感したことについて、具体的に書きます。

【終わり】
感想文のまとめに当たる部分。「なか」で具体的に書いたことに対する自分の考えをまとめたり、これからの展望を書いたりします。

この3部構成にするなら、どのくらいの字数で書いていったら良いのでしょうか?

それぞれのまとまりの分量をみていきましょう。

始め、なか、終わりはどのくらい書いたら良い?3つのまとまりの分量

それぞれのまとまりに、どんなことを書いたら良いのかはわかりましたが、一体どのくらいの分量を書いたら良いのでしょう。

「青少年読書感想文全国コンクール」の応募要項によると、原稿用紙の字数には以下の規定があります。

小学校低学年の部(1、2年生)…本文800字以内
小学校中学年の部(3,4年生)…本文1,200字以内
小学校高学年の部(5,6年生)…本文1,200字以内
※題名、学校名、氏名は字数に数えません。

原稿用紙の大きさや字詰めの規定はありませんが、よく使われる400字詰め原稿用紙で枚数を換算すると、以下のようになります。

小学校低学年…原稿用紙2枚分
小学校中学年…原稿用紙3枚分
小学校高学年…原稿用紙3枚分

「始め」や「終わり」よりも、「なか」は具体的な出来事を書くことが多くなるため、字数が多くなります。

これをもとに、「始め」、「なか」、「終わり」は、以下の分量を目安にすると書きやすいでしょう。

【小学校低学年】

  • 始め…10行前後
  • なか…20行前後
  • 終わり…10行前後

【小学校中学年と小学校高学年】

  • 始め…15行前後
  • なか…30行前後
  • 終わり…15行前後

それでは、実際に書くときの例を見ていきましょう。

本を読むときからやっておこう!読書感想文の書き方例

感想文に書く本を選んだら、本を読む段階でやっておきたいことがあります。

それは、強く心を動かされてことをメモしたり、本に付箋を貼ったりして印を付けておくことです。

この印は、後で読書感想文を書くときの材料になります。

具体的にそれぞれのまとまりでどんなことを書いたら良いのか、それぞれのリストのなかから選んでいきましょう。

3部構成のなかに書くことのリスト

3部構成(はじめ・なか・終わり)に分けて、書きやすい項目をまとめています。本を読んでいく中で、書いてみたい項目、伝えたい項目を選んでおきましょう。

【はじめ】…最初の「書き出し」に当たる部分。あらすじや本を読むきっかけなど。

  • 題名、作者について
  • いつ、どこで起こった話か
  • 心を動かす元になったあらすじ
  • 登場人物と自分に共通点があった
  • 誰かのおすすめの本だった
  • 読んでみたい内容だった
  • 読んだ感想

【なか】…「始め」で書いたあらすじに対して、感動・や共感したことなど。

  • 好きな登場人物について
  • 感動や共感した場面・せりふについて
  • 同じ体験をしたこと
  • 登場人物の気持ちについて考える
  • 登場人物がもし、自分だったらどう思うか考える

【終わり】…感想文のまとめに当たる部分。考えのまとめやこれからの展望など。

  • 本を読んで感じたこと
  • 本を読んで変化した気持ち
  • 作者が何を伝えたかったか
  • 自分はこれからどうしたいか

例えば、このリストに書いてあることを使って、宮沢賢治の『注文の多い料理店』について、書いてみましょう。

まず、簡単なあらすじをご覧ください。

【あらすじ】
2人の若い紳士が猟犬2匹を連れて山で狩りをしていると、一軒の西洋料理店「山猫軒」を見つけます。

お腹を空かせた2人は、「太った人や若い人は大歓迎」という看板に喜んで入っていきます。

部屋の戸には、「髪をきちんとして、泥を落として下さい」、「鉄砲と弾丸を置いて下さい」など、数々の指示が書いてあり、2人はなんの不思議もなく指示に従います。

しかし、「注文が多くてお気の毒でした。体中に塩をたくさんもみこんで下さい」という最後の指示を見た2人は、自分たちが料理されることに気がつきます。

有名なこの本は、絵本にもなっているので、低学年でも読みやすい作品です。

それでは、下書きの準備を始めてみましょう。

『注文の多い料理店』の感想文を書いてみよう【下書き準備】

『注文の多い料理店』の感想文を書くとき、【始め】、【なか】、【終わり】で書きたいことをリストから選ぶと、こうなります。

【始め】
・読んでみたい内容だった
・心を動かす元になったあらすじ
・読んだ感想

【なか】
・登場人物の気持ちについて考える
・登場人物がもし、自分だったらどう思うか考える

【終わり】
・本を読んで感じたこと

さらに、その内容をメモすると、以下のようになります。

【始め】
●心を動かす元になったあらすじ…狩りの途中で猟犬が死んでしまったが、青年達は悲しむ様子がない。自分は悲しいと思った。

●読んでみたい内容だった…「料理店」という題名から、たくさんの料理が出てくる内容だと思って読んだが、違っていた

●読んだ感想…たくさんの注文が入る人気の料理店のことかと、途中まで自分も騙されていた。

【なか】
●登場人物の気持ちについて考える…登場人物の2人の青年は、狩りの途中で猟犬が死んでしまったとき、おたがい「いくらの損失」と全く悲しむ様子がなかった。この2人は、動物をモノのように考えているのだと感じた。

●登場人物がもし、自分だったらどう思うか考える…自分が青年の一人だったら、猟犬が死んでしまったとき、悲しみにくれてしまうと思う。

また、お腹がすいて立ち寄った料理店では、騙されたまま自分が料理されてしまうと考えると恐ろしい。おかしいと思ったら、一度立ち止まるべき。

【終わり】
●本を読んで感じたこと…動物に思いやりを持って接したい。おかしいと感じたことは、立ち止まるか、よく確認してから次に進む。

ここまで、書きたいことをリストから選んで、内容をくわしく付け加えて肉付けする作業までできまして。

それでは、実際に感想文にしてみましょう。

『注文の多い料理店』の感想文を書いてみよう【下書き例】

ここまで書いたメモをもとに、感想文の下書きをしていきましょう。

「どんな美味しい料理が出てくるんだろう。」
 私が『注文の多い料理店』を選んだのは、料理することや食べることが好きだからです。たくさんの美味しい料理が出てくると期待していましたが、全く違った結末が待っていました。
 ここに登場するのは二人の青年紳士です。どちらも犬を連れて山奥へ狩りに行く途中でしたが、犬が二匹とも死んでしまいます。それなのに青年達は、悲しむ様子もなく犬の死を「二千四百円の損害」と言って、まるで動物をお金やモノのように扱っていました。
 私は犬の死が悲しいと感じたのに、青年達はそうは感じておらず、怒りを覚えました。もし、私が青年の一人だったら、犬が死んだとき、悲しみにくれると思います。

やがて、お腹を空かせた二人は、西洋料理店に入ります。数々の指示に従ううち、青年達は自分が料理されることに気がつきます。
だまされたまま自分が料理されてしまうと考えると、とても恐ろしくなります。おかしいと思ったら、一度立ち止まるべきだと思いました。
――二人の青年は、どうして最後まで気がつかなかったのでしょうか?
お腹が空いていたことも理由の一つだと思いますが、青年達は山猫の指示を都合良く考えすぎたのです。
 たとえば、料理店の玄関に書かれた「ごえんりょはありません」のメッセージだけで、青年達はタダでご馳走してもらえると考えます。ふつうの料理店なら、タダで料理を出すことはありません。
 そうして、身につけた物をどんどん脱がせようとする指示にも、都合の良い理由をつけては従っていきます。物事を良い方に考える「プラス思考」は良いことですが、この物語のように悪いことにつながることもあるのだなあ、と感じました。
 私自身、周りからは「プラス思考」とよく言われます。遠足の日に小雨が降っていましたが、買ったばかりの傘がさせることと、みんなに見てもらえることで、前向きにとらえていました。実際は泥がはねたり、座るところが濡れていたりして大変でした。
2人の青年も、遠足の時の私のように、自分にプラスのことしか頭になかったのだと思います。

この本を読んで感じたことは、二つあります。
一つは、動物に思いやりを持って接したいということ。そして、二つめは、おかしいと感じたことは、立ち止まるか、よく確認することです。
 青年達は動物をモノのように扱っていましたが、今飼っている犬はまるで言っていることが分かるかのように、鳴き声やしぐさで応えます。動物にだって心があるのです。だって、危機に直面した青年達を助けたのは、死んだはずの2匹の犬なのですから。
言葉は通じなくても、動物にはやさしく接したいと思いました。
二つめに感じたことは、なんでも都合良く考えていた青年達をみて思いました。自分自身もプラス思考で都合良く考えることが多いけれど、結末がよいとはかぎりません。少しでもおかしいと感じたときは、立ち止まって考えるようにしたいと思いました。

この感想文は1,200字以内で、中学年~高学年向けです。【なか】と【終わり】の段落の始まりは、それぞれ改行しています。

あらすじと自分の感想や、実際に起こった出来事を交えて書いていくと、スムーズに取り組めるでしょう。

原稿用紙に清書するときは、符号やかぎかっこの位置にも気をつけて書いていきます。

書き終わったらチェック!原稿用紙の使い方と誤字・脱字

感想文を書き終えて、「ああ、終わった!」とそのまま提出しようとしてはいませんか?

一度、原稿用紙に書き終えたら、初めから一度読み直してみて下さい。

書いている時には気がつかなかった字の間違いや小さなミスが見つかるかもしれません。

最終チェックには、自分以外の人に見てもらうのも効果的です。自分では気がつかないことも指摘してもらって、初めて気がつきます。

こうした気づきにくいミスは、誤字・脱字のほかに、原稿用紙を正しく使えていないことがあります。

原稿用紙の使い方で特に気をつけて欲しいのは以下の6つです。

【原稿用紙の正しい使い方】

  • 題名は2~3字下げて書く。
  • 学校名を2行目に書き、学年・組と氏名を3行目に書く
  • 学年・組の下のマス、名字と名前の間のマス、一番下のマスはひとマス空ける
  • 段落が変わるときは、ひとマス空けて書き始める
  • 句読点・符号、かぎかっこはひとマス使って書く
  • 句読点・符号、かぎかっこが行の最初にくるときは、前の行の最後のマスに入れるか、その下に書く。

原稿用紙の使い方のミスで大幅に減点されることはありませんが、読む人へのマナーとして、守って欲しいところです。

こちらの記事では、原稿用紙の使い方についてさらに詳しくお伝えしています。→どうやって書いたら良い?小学生が気をつける感想文の書き方

読書で人生を豊かに 良い本と出会って自分を見つめ直そう

読書感想文を書くには、本を読むことが欠かせません。

本が嫌いだという子もいますが、まだおもしろい本と出会っていないのかも知れません。

もし、読書が苦手、感想文を書くのが苦手…という子がいたら、興味を持ちそうな本を周りが選んであげて、勧めてみて下さい。

おもしろい本を読んだ後は続きが気になって読みたくなります。また、心が動かされた本は、読んだ後に誰かに聞いて欲しくなります。

この、「聞いて欲しい」ことを、読書感想文で伝えるのです。

面白くない、感動しない本は読んでも記憶に残りません。

心を動かされるような良い本と出会い、本の世界を知ることも読書感想文を上手に書くための一歩となります。

今回ご紹介した本選びのコツや書き方の例をもう一度おさらいして、楽しく読書感想文に取り組みましょう。

【本選びのコツ】

  • 実際に手にとって読む
  • 文章が読みやすい本を選ぶ
  • 最後まで読めそうな本を選ぶ

【書き方の例】

  • 「始め」、「なか」、「終わり」を意識して書く
  • 本を読むときは、書く材料の部分に印を付けておく
  • 3部構成のリストの中から、書きたい項目を選ぶ
  • 学年ごとに決まった字数に気をつけて書く
  • 書き終わったら見直しをする(誤字・脱字、原稿用紙の使い方)

丁寧に自分の気持ちと向かい合って読書感想文を書くことで、自分の思いを確認したり、初めて発見したりすることもあります。

読書を通して、自分のことをもっと知るきっかけになると思うと、本を好きになれるかもしれません。

たくさんの良い本と出会って、読書感想文で自分を見つめ、想像力豊かに人生を送って行けたら良いですね。

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